listen to music、depend on、wait for、agree with——動詞の後ろに付く前置詞は、学習者に「英語は恣意的だ」と感じさせる筆頭です。日本語の助詞を一文字ずつ対応させようとしても、マスが埋まりません。しかし英語の側から見ると、この組み合わせには動詞の性質と前置詞のイメージという二つの規則が重なっていて、全暗記を回避する道があります。その道をこのガイドで通します。
なぜ listen music は通らないのか
「音楽を聴く」は英語で listen to music。では「音楽を聞く(聞こえる)」は? hear music で to が要りません。混乱の原因は、日本語の「を」がただの目的語マークなのに対して、英語は動詞の側に「目的語に直接届く能力(他動詞か自動詞か)」を持たせていることです。listen は「耳を傾ける」という自分の動作までしか描かず、音そのものには届かない。だから to で「先への到達」を補って listen to music になります。hear は音が耳に届いてしまう話なので、到達の補助は不要です。
では前置詞は飾りかというと、そうではありません。前置詞は動詞の「どの方向へ伸びるか」を決める部品です。look at the board(黒板の一点に視線を着ける)と look for my keys(見失った物に視線を向ける)では、look の後が全く別の動詞になっています。日本語の「見る/探す」に相当する差が、英語では前置詞の側に住んでいる——この記事の残り全部は、ここから先の地図です。
助詞に対応表は作れない
まず諦めるべき夢を確認します。「日本語の助詞 → 英語の前置詞」の対応表は作れません。同じ「に」が英語では四散します。音楽に耳を傾ける → listen to、天気に左右される → depend on、バスに乗る → get on the bus、公園にいる → be in the park、3時に → at three。逆に「を」は listen to music(to)・discuss the plan(前置詞なし)・wait for the bus(for)と三通りに割れます。助詞は名詞に付く飾り、前置詞は動詞の一部——部品の所属先が違う二つの言語なのです。
| 日本語の同じ助詞 | 英語の別々の前置詞 | 例 |
|---|---|---|
| 「に」 | to / on / at / in | listen to・depend on・arrive at・live in |
| 「を」 | 直結 / to / for / about | discuss it・listen to it・search for it・think about it |
| 「で」 | in / with / by / on | write in ink・cut it with a knife・go by train・live on a pension |
ここで絶望しないための情報が二つあります。第一に、恣意的に見える組み合わせの相当数が、次のセクションの「前置詞の骨格イメージ」で回収できます。depend on は体重をその上に預ける絵、wait for はまだ来ない先を見上げる絵、agree with は相手と並んで歩く絵——一度受け取れば、同じ前置詞の仲間(count on、plan for、argue with)が推測可能になります。第二に、残りは「熟語」として暗記の対象ですが、量は限られていて、まずは日常でよく使うものから、二、三十個ほど覚えれば出発点になります。
前置詞の骨格イメージ
前置詞はそれぞれ一つの空間イメージを持っていて、動詞との組み合わせはそのイメージの延長線上にあります。六つ挙げます。to=線の上の到着・方向:listen to(耳を音へ向けて届ける)、talk to(言葉を相手に届ける)、belong to(所属先へ向く)。on=下への接触・依拠:depend on(天気の上に自分を預ける)、count on(当てにして数を乗せる)、focus on(注意を面として接する)。
for=まだ来ていないものを見上げる・求める
wait for the bus(まだ来ていないバス)、look for my keys(見失った鍵)、ask for help(助けを求める)、apply for a job(職に手を挙げる)。相手が到着する前提の語群です。Thank you for your help.(助けてくれたことに対して、という理由・対象を示す for)
with=並ぶ・相対する
agree with you(意見を並べる)、argue with the client(向かい合って論じる)、deal with a problem(対面して扱う)、help me with my bags(荷物を一緒に持つ)。I'm bored with this job.(この仕事と並んだ結果が飽き)も同じ系列です。
about=周囲をぐるぐる回る
talk about the plan(計画の周囲を言葉で巡る)、think about it(頭の中で周回する)、worry about you(あなたの周りを気に掛けて回る)、complain about the noise(文句を音の周辺に撒き散らす)。「話題の回覧」が about の核です。
at=一点に照準を付ける
look at the board(視線を着ける)、laugh at him(笑いを本人に撃つ)、shout at me(怒鳴りを一点に投げる)、good at English(英語という一点に得手を置く)。to が到着なら、at は着弾です。
前置詞は動詞の意味と構文に合わせて選びます。Recover from an illness は病気から回復するという組み合わせです。未知の動詞は、同じ意味の辞書例を確認してください。
クイズ:正しい文を選ぼう(全7問)
動詞+前置詞を一語として覚える
イメージで回収できない残りの部分——listen to がなぜ to なのかといった理由——は、追いかけるより覚えるほうが速いものです。ここでの定着法は一つだけで、動詞と前置詞を切り離さず「listen to」という一つの句動詞として覚えることです。英和単語帳のように listen=聴く、depend=頼る、と動詞単独で語彙リストを作ると、前置詞は会話の最中に即席で選ぶはめになります。即席で選ぶ基準が日本語の助詞なので、listen music と depend of が生まれるのです。
音の繋がりも材料になります。ネイティブの発話では listen to が「リスントゥ」、wait for が「ウェイフォ」に縮み、一塊の語として耳に付きます。この縮み方をわざとマネして音読すると、前置詞を「後から付ける部品」ではなく「動詞の一部」として口に覚えさせられます。ドリルで固めたい人は 動詞+前置詞の練習問題が同じ章立てで解けるようにできています。
前置詞が消える動詞たち
逆方向の罠もあります。日本語の「について」「に」「へ」が英語では動詞に吸い込まれて消えるケースです。筆頭は discuss。Let's discuss the plan. が正解で、discuss about the plan は about の置き場所がありません。同じ構造の動詞を並べます:mention(He mentioned the problem./mention about)、describe(Describe the scene./describe about)、enter(Enter the room./enter into the room ※「契約を結ぶ」の意味では enter into an agreement が正しい)、reach(We reached the station./reach to)、marry(She married a doctor./married with)、resemble(He resembles his father./resemble to)、answer(Answer my question./answer to)。
もう一グループ、日本語の「に」が英語で消えて、語順まで決まる動詞があります。説明の相手を直接目的語にできない系列です。He explained me the rules. は不可で、He explained the rules to me. が正解。同類は suggest、recommend、describe、say。相手を置きたいなら tell と give に動詞を交代します(He told me the rules.)。「私に言って」は tell me(say なら say to me)、「私に説明して」は explain to me——to の有無が動詞の選択にまで関わってきます。
| やりがち | 実際 | 理屈 |
|---|---|---|
| discuss it / talk about it | about を内蔵した他動詞か、届かない talk か | |
| explain it to me / tell me | 説明内容は直結、相手には to 経由 | |
| reach the station | reach は既に「到着」の他動詞 | |
| married him / be married to him | 動作は直結、状態は to 経由 |
「前置詞を余分に付けてしまう」誤用と「前置詞を落としてしまう」誤用は、原因が同じです:日本語の助詞を見て前置詞を選んでいる。診断はいつも同じで、動詞を見て決める——この動詞は目的語に直結できるか、どの方向の前置詞を要求するか、と。
定着させる練習法
最後に、これらの練習法です。一つ目は一日一棚の音読。上の六イメージの棚から毎日一個選び、その前置詞で組む動詞を例文ごと五つ声に出します。月曜 on(depend on・focus on・work on・count on・insist on)、火曜 for(wait for・look for・ask for・apply for・thank 人 for)のように回すと、一週間で骨格の全周回が終わります。前置詞を「選ぶ」のではなく「動詞の一部として口に出す」練習です。
二つ目は自分の一日の語彙化。その日やったことを三つ、動詞+前置詞の形で言います:I listened to a podcast. I waited forty minutes for the bus. I'm looking for a better routine. 使う動詞が自分の生活に紐付いていると、前置詞の記憶は文脈ごと固定されます。三つ目は書き物の巡回。メールを下書きしたら、動詞だけに目を走らせ、後ろに前置詞が要るのか不要なのかを一個ずつ点検します。この巡回だけで、depend of と married with はほぼ消えます。
それでも迷うものは、無料の英文法チェッカーに出して、どこを直されたかを確認します。直された箇所を動詞ごとに棚へ追加していくと、覚えられる組み合わせが着実に増えます。さらに練習したい場合は、他のガイドとドリルも ブログ記事一覧から見つけられます。前置詞は英語の壁に見えて、実は「動詞をよく見れば終わる」問題です。見る場所を動詞に移した人から、この単元は楽になります。
練習のコツ:前置詞を「選ぶ」のをやめる
英作文の最中に前置詞を即席で選んでいる限り、基準は日本語の助詞に戻ります。発想を逆転させて、「動詞+前置詞」を丸ごと選んでください。listen to なら「リスントゥ」、depend on なら「デペンオン」という一語として。選択単位が動詞になると、前置詞の誤りは原理的に減ります。
会話中の自己訂正は恐れなくて大丈夫。I listened music—sorry, listened to music. と自分で言い直すと、その一往復が記憶になります。他人に訂正された間違いも、直し方ごと棚に戻せば同じ効き方です。
最後に、イメージで全部説明しようとしすぎないこと。骨格が効くうちは利用し、効かないものは「一語の暗記」で割り切る——この線引きこそが、前置詞と長く付き合うコツです。
前置詞の要否と種類は翻訳では決まりません。判断軸は動詞:目的語に直接届く動詞(hear・discuss・enter・marry・reach)は前置詞不要、届かない動詞は前置詞で距離を埋める(listen to・wait for・depend on)。助詞に対応表は作れないが、骨格イメージは回収する:to=到着/on=預ける/for=見上げる/with=並ぶ/about=回る/at=一点。覚え方は一語化:「動詞+前置詞」を切り離さず例文ごと保持し、間違いはその棚に追加。discuss about と married with のように前置詞を余分に付ける誤りも、explain me のように語順を取り違える誤りも、診断は同じ——助詞ではなく動詞を見ることです。
よくある質問
listen to なのに hear はなぜ to が要らないのですか?
二つの動詞で「音への到達度」が違うからです。listen はこちらから耳を向ける動作で、音そのものには届いていない——だから to で距離を埋めます。hear は音が耳に届いてしまう動詞なので、届いた相手(音)を直接目的語に取れます。I heard a strange noise.(変な音が聞こえた)に to は不要。同じことは see と look at、watch と look at の間でも起きていて、前置詞の有無は動詞の性質の問題です。
discuss about が間違いなら、talk about はなぜ正しいのですか?
talk は目的語に直接届かない自動詞なので、話題を示すには about が必要です(talk about the problem)。一方 discuss は「〜について話し合う」の意味を最初から含む他動詞なので、Discuss the problem. のように目的語を直接置き、about は付けません。語源から推測するよりも、discuss + 話題という実際の構文をそのまま覚えてください。
agree with / agree to / agree on はどう使い分けますか?
with は人や意見に並んで立つこと(I agree with you.)、to は相手の提案を承諾すること(I agree to your terms.)、on は交渉の末に点を決めること(We agreed on a price.)。賛成する相手を表す目的語が「人」なら with、「提案」なら to、「決めた事項」なら on——前置詞の意味の骨格どおりなので、イメージで覚えると3つまとめて定着します。
組み合わせは結局丸暗記ですか?何か理屈はありますか?
半分は理屈、半分は慣れです。理屈の側は前置詞のイメージで、to=到着・方向、on=接触・依拠、for=目標・求め、with=同伴・相対、about=話題の周囲、at=一点標的。この骨格が多数の組み合わせを支えています(depend on、count on、focus on は全部「上に預ける」)。ただし listen to が to である必然は歴史的に説明できても予測は難しいので、初出の組み合わせは動詞と前置詞を切り離さず一語として覚えるのが最も確実な近道です。
look for・look after・look at のように1動詞多前置詞の場合は?
これこそが前置詞が動詞の一部(句動詞)として働いている証拠です。look for は「見つかっていない物に視線を向ける」=探す、look after は「後ろに視線を置く」=世話をする、look at は「一点に視線を着ける」=見る。それぞれ別の動詞・別の単語として扱うべきで、前置詞ごとに例文を1つ持つのが最短です。意味の核(視線を向ける)は共通なので、イラストや動作で結び付けると離れません。
listen to、discuss、depend on——あなたの文では正しい形?
書いた英文を PromGee の無料チェッカーに貼ると、前置詞の欠落・誤挿入・取り違えを拾って、動詞ごとに必要な形を説明します。日記から仕事メールまで、送信前に一度通してみてください。
無料チェッカーを開く